強い劣等感に苛まれてひどく苦しい
自分が他人よりも劣っているという感情。
それが劣等感です。
これまで生きてきた中で一度は感じたことがあるという人も多いのではないでしょうか。
劣等感がどのように生まれるかと言うと、他人との比較によってです。
自分と他者を比べたときに自分の方が劣っているところがあり、落ち込んでしまったり、押しつぶされそうになってしまうということがあります。
しかし、実は劣等感というのはネガティブな避けるべきものではなく、むしろ努力や成長のエンジンとなるものなのです。
劣等感を原動力とした心理学者アルフレッド・アドラー
劣等感を原動力として大きな飛躍を遂げた偉人はたくさんいます。
例えば、フロイト、ユングと並ぶ心理学者の三大巨匠と言われるアルフレッド・アドラー。
日本でもアドラーの教えを解説した『嫌われる勇気』(岸見一郎氏、古賀史健氏)などが大ベストセラーとなっています。
そんなアドラーですが、幼少期は病弱で、くる病(骨が弱くなる病気)にかかり歩行が困難になったり、肺炎で瀕死の重体になり、「医者に見放された」とまで言われていました。
また、兄とよく比較され、「兄は健康で優秀、自分は病弱で劣っている」という劣等感を幼いながらに強く抱いていました。
しかし、それを医者になって、自分のような子どもを助けたいという願いに昇華していきます。
それは自分自身が助けられた側だったからこそ、今度は自分が誰かを助ける側になりたいと思えたのです。
つまり、病弱な子ども時代の劣等感が原動力となって、アドラー心理学は形作られていったのです。
他者との比較ではなく自分自身との比較を
劣等感を克服し、努力や成長のバネとしていく上で大事なことは、他者との比較ではなく自分自身との比較をするということです。
十年前の自分と今の自分を比べてどうか。
三年前の自分と今の自分を比べてどうか。
一年前の自分と今の自分を比べてどうか。
昨日の自分と今日の自分を比べてどうか。
一歩でも二歩でも成長進化の道を前に進めているか。
そこを比べるのです。
そして、他人との競争ではなく、自分自身がどうなりたいのか。
どんな目標を描いているのか。
どんな夢を描いているのか。
どんな理想を描いているのか。
その将来の自分と今の自分を比べるのです。
そこに向かって一歩でも二歩でも近づけているか。
比較する上で焦点を当てるべきは過去の自分と今の自分、そして、未来の自分と今の自分です。
本当の自分らしさに気づき、利他と感謝の心で社会に役立てる
アドラーは最終的には自分が社会や他者にどう貢献できるかという視点に立つことが劣等感を超える方法だとしました。
それは他人と比較し、その優劣に悩むのではなく、他人とつながりながら自分という存在を誰かのために役立てるということです。
人間はみんなそれぞれ良いところもあれば悪いところもあります。
長所もあれば短所もあるのです。
大切なのは、その個性を生かし合うということです。
自分にしかできないこと、自分だからこそできることがそれぞれにあるのです。
そのような唯一無二の個性をそれぞれに埋め込まれて、神さまは私たちを創られています。
その自分らしさに気づき、他の人々の素晴らしさにも気づき、共に利他と感謝の心でもって生きるということ。
それが劣等感を乗り越え、押しつぶされそうな苦しみだったものが大きな喜びへと変わっていく道であります。