裏切られた相手を許せないという人へ
好きだった人や信頼していた人に裏切られたとき、もう立ち直れないほど傷つくことがあります。
そんなとき、こう思うことはありませんか。
「自分が苦しめられた以上に相手にも同じ苦しみを味わわせたい。いや、それ以上にもっと苦しんでほしい」
「自分の味わった苦しみや傷はこんなものではないし、絶対に許せない。決して憎しみは消えない」
「あんな奴は死ぬほど苦しんでほしい。いや、むしろ死んでほしい」
そんなふうに思うこともあるかもしれません。
相手のことが好きであればあるほど、信頼していればいるほど、裏切られたときのショックは大きい。
そして、もうしばらくは何も手がつかない。
そんな状態が続くものです。
相手を憎む思いや気持ち自体が苦しい
いかに自分が不幸な人間かという現実を突きつけられる一方で、自分を裏切った相手はというと、幸せそうに生きている。
こちらの苦しみなど知りもせずに生きている。
そうなると、「絶対にあいつだけは許せない」となるのも無理はありません。
そして、そういう思いが行き過ぎると、「死ぬまで呪ってやる」というようなことになりかねません。
ところが、そんな不幸の中にいる当人も心の中では分かっているのです。
「もし今、自分が幸せならきっとこんなことは思わない。そんなふうに相手を憎んでいるこの気持ち自体が苦しい」と。
このことから私たちが学べることは何でしょうか。
心に憎しみの思いがあると幸せになれないという事実
それは、心の中に憎しみの思いがあると人は幸せになれないということです。
裏切られた、ひどいことをされて傷ついたという事実は消えませんが、そのときに相手を憎むことで、さらに不幸になっていくのです。
どんどん苦しくなっていきます。
もし仮に、相手も同じような苦しみを味わうことになり、「ざまあみろ」となったとしても、スカッと心が晴れるかというとそんなことは決してありません。
一時、スカッとしたとしても、「もっと苦しめばいい」とますます憎むようになるか、もしくは、時が流れ去ってだんだん相手への憎しみが消えてきたように見えても、心の中には相手をひどく憎んで許せなかった記憶がトゲが刺さったように残るのです。
その人のことを思い出すだけで、嫌な気持ちになり、攻撃的な気持ちが湧き上がって押さえられなくなる。
その人とはもう全く会うこともなくなり、顔も見なくなり、何十年経ったとしても、ふと何かの拍子で思い出したときに当時の記憶が鮮やかに蘇り、苦しい気持ちで心の中がいっぱいになってしまう。
心に刺さったトゲを抜かなければ幸せは訪れない
そのような状態では、いつまで経っても心に平安は訪れません。
幸せというのは心で感じるものです。
心が調和されて平安でない限り、いつまで経っても本当の幸せというものはやってきません。
トゲが刺さったままでは、ふとしたときに心が波立ち、苛立ち、嫌な思いを繰り返すことになってしまうのです。
一番の特効薬は相手を許すこと
では、心に刺さったトゲを抜くためにはどうすればいいのでしょうか。
その一番の特効薬は、「相手を許すこと」なのです。
許すことが一番の特効薬なのです。
ただ、許すといっても、自分をそれだけ傷つけた相手を許すのは決して容易なことではありません。
「死ぬまで許さない」と思った相手を許すことなど、そう簡単にはできません。
でも、許すことができないと、いつまで経っても幸せというものはやってこない。
そこに一つの大きな壁があるのです。
「自分はあれだけひどく傷つけられた。それでもあなたを許します」と思えるようになるかどうか。
相手が悪いという思いからの脱却
しかしながら、普通はなかなかそうは思えません。
なぜなら、どう考えたって自分を傷つけたのは相手のほうであり、自分ではなく相手が悪いと思っているからです。
「苦しめられた自分のほうは絶対に悪くない。悪者は相手のほうであり、自分は決して悪くない」と、普通はそう思っているはずです。
ところが、はたしてそうなのか。
ここにトゲを抜くためのヒントがあるのです。
「相手のほうが絶対に悪いと思っていたけど、でも実は自分にも悪いところがあったのではないか」
「自分のほうに何の非もなかったと言い切れるかどうか」
「こちらがもし違う態度で相手に接していたら、また違った結果になったのではないか」
互いに学ぶべきことがあり、成長する機会が与えられた
この世に完璧な人というのは一人もいません。
それはどれだけ素晴らしいと思える人であってもです。
神様でない限り、完璧な人など存在しません。
そのことに思い至ると、「相手にも良くないところは間違いなくあった。しかし、それと同じように、自分にも良くないところがあったのではないか」と思えるようになってくるはずです。
「相手にも自分にも未熟なところがあった。互いに学ぶべきことがあったのではないか。それでお互い傷つけ合い、憎しみ合っていたのかもしれない」と思えるようになると徐々に傷が癒えてくるのです。
すると、互いの未熟さを責め立て合い、傷つけ合うことが終わりを告げ、相手を本当の意味で許せるような心になるのです。
そのときに心のトゲが溶けて、抜けていくのです。
それ以降は、いくら相手のことを思い出しても、苦しみや憤りが湧き上がってくることもなくなっていきます。
「互いに成長する機会を与えられたんだ」と思えるようになってくるのです。
そして、当時は全く考えられなかったような、相手と出会えたことに対する「感謝」の思いまでもが心の中から湧き上がってくるようになります。
憎しみのピンが抜け、感謝が生まれる
そのとき、傷というものは完全に癒されていきます。
憎み合うのではなく、許し合い、感謝し合うになっていくのです。
それこそが、裏切られたという思い出したくもなかったような経験を通して、より愛深き人として成長、進化した証となるのです。
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