ある夫婦の和解

永遠の魂

ある夫婦の和解

人はいつ死ぬことになるか分かりません。

死んでから、生きているうちにあれをしておけば良かったと後悔しても後悔しきれません。

ある夫婦の話です。

妻とうまくいかず、夫は外泊続きで家に帰ろうとしませんでした。

前々から胃が悪く、食べては吐くことを繰り返していた夫は大の病院嫌いで、決して医者に診てもらおうとはしませんでした。

あまりにも具合が悪くなり、意地を張り続けることができず、とうとう折れて妻のいる家に帰ってきましたが、時すでに遅く、そのまま帰らぬ人となりました。

妻は夫のことをずっと心配し、心から愛していました。

夫が亡くなって数日経ったある日、一人の女性がバラの花束を持って妻のもとを訪ねてきました。

その女性は「ご主人から花のプレゼントです」と言うのでした。そして、「ご主人がこう言っています」と言い、話し始めるのでした。

「俺が馬鹿だったんだ。ごめんな。本当にごめん。苦労ばかりかけてしまってすまない。俺はどうしようもない奴だった。許してほしい。もう見守ってやることしかできない。子どもたちを頼む。どうか俺を許してくれ」

その言葉は、妻にとってまさに夫の言葉でした。
妻はそれを聞いて、ただただ泣きました。

その女性は亡くなった人が見えたり、亡くなった人と話をする力を持っていて、「亡くなったご主人が今ここにいるの」と言い、ご主人の言葉を伝えるのでした。

夫は外泊が続いていたとき、ある友人から「バラでも買って奥さんのもとに帰りなさい」と言われていました。その知人は、奥さんがどれだけ夫を大切に思い、愛しているのかを知っていたのでした。

生きているうちに花束を渡すことができなかった夫は、その女性に代わりにバラを渡してもらいました。そして、生きているうちにしてやれなかったことを悔やみながら、ただ謝るのでした。

それは、この夫婦にとって、本当の意味での和解が訪れた瞬間でもありました。

「夫の肉体がなくなった後も、夫は目には見えない姿で確かに生きている」

妻はそう思いました。

人の肉体は死んでも、魂は死にません。

目には見えない姿に変わっただけで、存在し続けています。

お互い住む世界が変わる前に、この世でやり残すことがないように、日ごろから感謝の思いを伝え合うということが大事なんだと思わずにはいられないお話でした。